1日1本のアニメ映画を要求する!

嫌いな小説は森絵都の「カラフル」

24.のび太と空の理想郷 C

非常に端的に:「理想郷」にたどり着いたのび太たちはその真相を知り、野望を打ち砕く。
あらすじ:「三日月形の島」ユートピア伝説を聞いたのび太はそれを見つけるために、ドラえもんにねだって中古の四次元飛行船「タイムツェッペリン」を買ってもらう。5人は和気藹々と津々浦々の三日月形の空島を探すが、偶然にもそれを発見する。
上陸しようとするドラえもんたちを黒い猫型ロボット「ソーニャ(男)」が襲撃し、タイムツェッペリンは大破。しかしその島はパラダピアという、三賢人の治めるパーフェクトな人間の住む争いのない平和な国、ユートピアだったのだ。のび太たちはここに住もうと考え学校に編入されるが、のび太だけ異様に成長が遅かった。しかしのび太は、だんだんと聖人君子化していくジャイアンスネ夫、しずかに不気味なものを感じ始める。
ある夜のび太はパラダピアへの侵入者を発見、ドラえもんとソーニャの協力を得て「変身ライト」で虫に変身させて撃退し、三賢人に褒められる。しかし生徒の一人「ハンナ」はそれを咎め、パラダピアの真の姿を明かした。この島は洗脳光線の実験場であり、侵入者はハンナの家族が救出のために雇った女賞金稼ぎ「マリンバ」で、ハンナはマリンバの協力を得て洗脳を一時解除できたのだ。ドラえもんのび太マリンバの3人はタイムパトロールに救援を要請するがソーニャにつかまってしまう。
三賢人の前に引きずり出されたのび太。成長の遅いのび太こそ洗脳光線の非常に効きにくい体質の持ち主で、最後のピースだったのだ。洗脳されたのび太は命令されるがままにドラえもんを虫にしようとするが、ドラえもんをゴミだと断じた三賢人に激昂。ジャイスネしずの欠点をなじりながらも「そこが個性だ、自分の心に正直になる方がいい」と断言し、3人の洗脳を解く。
すると黒幕の「レイ博士」が姿を現し、パラダピアを墜落させて逃亡。このままでは下にある街が危ない…ドラえもんたちはパラダピアを「四次元ゴミ袋」に捨てて墜落を食い止めようとするが、ゴミ袋が爆発しそうになる。三賢人の言いなりだったソーニャは自分の心に正直になることを教えてくれた友人に感謝しながら、自己犠牲の心でパラダピアとともに散った。
後日ソーニャのメインメモリーを見つけたドラえもんたちはこれが修理できることを確認。やはりみんな違ってみんないい、理想郷なんていらない!と結論を出すが、直後にママに0点のテストをさんざん叱られるのだった。

感想:いわゆる「新ドラのオリジナル作品」だが、傑作とされる博物館・南極・月面に比べると名前が上がりにくい作品。かなり思想的な中盤は良し悪しだが、時系列が入り乱れて『序盤の思わせぶりな伏線が後半に回収される』という入れ子的な図式が美しいというなかなかの意欲作。
ただ思想統制系の話っていうのは現代日本というか、民主主義・資本主義の社会においてこういう話っていうのは落としどころが完全に決まっているのでつまらないのだ。個人的にはユートピアを破壊することにすさまじい後味の悪さが残っているのが好みなのだが、逆に「ユートピアをもっと派手に否定しろ!」という意見もあった(悪党の逮捕パートがなかったからだろう)。
この辺がやっぱり、良作と傑作の壁を越えられなかった要因じゃないかなぁと思う。俺なんかはどちらかといえば、星新一とかの世界にある「思想や意見を機械が統制する世界」の方がよほど理想郷だと思うもの。たとえばここで世間的な傑作を否定して睨まれたり、逆に駄作を良いと思って周りに否定されたりってこともないでしょう。
最近の個性なんてのは結局、シコるためのノイズにならない範囲での自由度にすぎない。それなら俺はさっさと思想を統制してもらいたいもんだ、悩まずに生きる方がよほど有意義だからね。