概要:ドラえもんたちは夏の暑さに耐えかね、南極で氷を使って遊ぶことを思いつく。氷の中に謎のリングを見つけて調べてみると、これが10万年前、人類が南極にいるわけがない時代のものだと分かった。このリングの正体を見極めるべく、いつもの5人は10万年前に旅立つ。
感想:最初に言っておくと、普通に面白い。この作品は時間が入れ子状になっていて、そこで大人を楽しませる。でっかい悪いもんを倒すことで子供を楽しませる。どちらも退屈しないので、実にうまくできてる。もうリメイクに頼る必要がないと本気で信じられるくらいには。ユートピアの時も思ったんだけど、ドラえもんの映画は時空移動が絡むシナリオの作り方がうまくなってきてる。
そしてやはり旧ドラを知る世代としては、スネ夫やジャイアンの活躍が旧ドラと微妙に違う点。旧ドラはジャイアンと言えばパワー担当で悪気はないが直情的なのだが、新ドラのジャイアンは勇敢で仲間思いで、微妙に魅せ方が異なっているのである。
この作品単品もそうなんだけど、新ドラの境地を切り開いた博物館に対し、月面と南極はそれを完全に軌道に乗せた作品といった感じ。30年以上を経て時代は変わった。適応できずに大長編が消えたり、いまいちな作品ばかりだったりというのが増えている中で、ドラえもんというブランドを抜きにしてもエンタメとして面白いことには驚嘆を禁じえない。この変わった時代のニーズに合わせた作品を、ちゃんと作り出せている。当たったかはともかくとして挑戦心も捨てていないし、旧作のリメイクも温故知新というか、守破離の領域に達しつつある。
コンテンツってのは、こうでなくちゃいけないのだろう。ただやっぱ…個人的にはたまには駄作を見たいかなぁ、シリーズものは駄作を見るのも楽しいのだから。ぜいたくな悩みなのだろうか。