1日1本のアニメ映画を要求する!

嫌いな小説は森絵都の「カラフル」

185.雲の向こう、約束の場所 C

感想:初見のときはだいぶ衝撃を受けたものだが、「君の名は。」とかで完全にブラッシュアップされた作品を見た後だとどうしても陳腐に見えるというか、そこに至る前段階、ラピュタと「死の翼アルバトロス」みたいな関係だと思う。
BGMのすばらしさやクライマックスのすごさなど、随所随所に素晴らしい部分が光るのだが、BGMが常に垂れ流しになっていて間がとれてなかったり、全体的に男中心で湿ってたり、あと「セカイ系」の枠は出てないかなぁっていう。あとこの物語って最終的に悲恋ともいえない普通の失恋で終わるんですよね。だからこの話は、情緒の柔らかく、そして知識の足りていない高校~大学で見ておくべきかなぁと思う。秒速と同じやね。
でも思うのは、「台風のノルダ」とかをはじめとした試作的なショート作品に比べるとかなりシュッとしているってことかなぁ…。

番外1.すてきなミイちゃん A★

概要:アニメのエピソードのひとつ。同タイトルの短編が元になっている。
ドラえもんが恋に落ちたという。普段世話になっているのび太は恩返しも兼ねて協力しようとするが、その相手はあろうことか「近所の子供がもっているおもちゃの猫」だった。ドラえもんはこれを無断で持ち出し、鳴き声を出す機能で一人遊びに耽るが、持ち主の父親に取り返されてしまう。譲ってくれと泣きついた挙句、犬に持っていかれたおもちゃを命がけで救ったことからおもちゃを譲ってもらった。ドラえもんはこれに22世紀のロボット用機能をつけて命を吹き込んでプロポーズするが、その猫は「いやだなあ、お婿さんなんて!僕は男だよ!」と大笑いして立ち去ってしまう。ドラえもんはショックのあまり大泣きし、のび太は「泣くなよ!人生にはいろんなことがあるもんだ」と慰める。
備考:3回アニメ化されているが、いずれも細部が異なっている。

感想:「ドラえもんの迷エピソード投票」を行えば、トップにはなれないかもしれないが一桁は堅い作品。普段はのび太ジャイアンに振り回されるドラえもんが、この回は逆に大暴れしてのび太が保護者になる。しかもドラえもんのび太の視点だと「ドラえもんがおかしくなった」だけのエピソードなのだが、それ以外の人の視点だと「正気を失った青いタヌキがおもちゃを相手に発情して持ち逃げし(ようとし)た挙句大泣きしながら譲ってくれと頼みに来る」というめちゃくちゃ怖いエピソードなのだ(わさドラ第1回の時はこの点が強調されて描かれた)。
のぶ代ドラ(1979年)は全盛期の大山のぶ代のオーバーな演技や間の取り方、設定がまだそこまでこりかたまっていないこと、当時の作画のせいでシンプルに狂気が浮き上がる必見の回。6分ちょっとしかないので狂気がかなり凝縮されており、久々にドラえもんで涙が出るほど笑ってしまった。この間の取り方が完全にギャグマンガや落語のそれなのだ。のぶ代の微細に入ったふられた後の息遣いは、今じゃもう大塚明夫レベルの大御所じゃないとできないというか、そもそもそういう演技指導・指示をできる人がいないんじゃないだろうか。
では、1979年の2倍ほどの時間をとっており、そういうところがマイルドになっている事に定評のあるわさドラはどうか?丁寧にドラえもんとおもちゃ猫(手動)のデートシーンが丁寧に描写されるので、江戸川乱歩の「人でなしの恋」とか「押絵と旅する男」じみた狂気がますます強まっており、それでありながら周囲が止めないせいでもはやホラーの域である。
そして原作はさらにセリフがシンプルなのでなおのこと狂気じみており、四者四様の狂気を味わえるというドラえもんきっての迷エピソード。よく「二次元コンプ」「男の娘」「ケモショタ」などに準えられる業の深い回だと言われるが、そういうのを一切抜きにして単なる昭和時代のカオスが詰まっていてやたら面白い。比較して見れる環境を整えると酸欠になるほど笑える、はず。ぜいたくな楽しみ方だ…。
それにしてものぶドラ末期のミーちゃん(普通の猫)やわさドラの女優猫(名前忘れたけど毛の長い猫、シャロンちゃんだっけ?)、2112年のノラミャーコさん(CV皆口のやたら色気のある擬人化された猫型ロボット)など、こいつ性癖の範囲やたら広くないか…?
そしてF先生。これのほかにも面白い話をいくつも思いつき、さらに「T・Pぼん」「ミノタウロスの皿」「ウルトラスーパーデラックスマン」などの毒々しい話まで書くってのは一体どうなってるんだ…。

184.2112年 ドラえもん誕生 A

概要:ドラえもんというキャラクターのオリジンを、「作者のF先生目線」と「ドラえもん世界の設定」から映し出した作品。矛盾したり第1回にあたる回が複数そんざいすることでこんがらがっていた設定の整頓、という役割も兼ねていると言われる。

感想:見てるだけでなつかしさがこみあげてくる。やたら濃いキャラが出てくる上に「金色で耳の付いた声の甲高いドラえもん」はすさまじいインパクトを与え、30分と短いことから子供の暇つぶしに最適ということで親御さんからの人気がものすごく高く、そのせいもあって当時のちびっ子に絶大な知名度と人気を誇った作品。ほんとに「魅力的な題材、人を選ばない出来」というハンバーグみたいな映画である。
この歳になって改めて見ると、懐かしさに加えて様々な小ネタにも気づいて味わい深い。っていうかノラミャーコ(CV皆口裕子)がやたらエロティックなのである。セクシーとかプリティーとかキュートじゃなくて、エロなのだ。
旧ドラ世代にとってこの作品はとても大きなマイルストーンで、当時は大長編がちょっと息切れしてきたこともあってすごい人気があった。ノラミャーコがやたら攻めたデザインになっていた理由も、斬新さを取り入れたかったという別紙氏の一声によるものだったようだ。
今はどれくらい設定生きてるのかなぁ…と思ってドラえもんの誕生日SPを何本か見たんだけど、大元は生きていてキャラクターは「ノラミャーコ」が原作化、「パワえもん」という非の打ちどころのない優等生キャラがドラえもんズやジャイベエ、スネキチを包括した感じになっているらしい。
さて、F先生アニメの視聴もこれでおしまい。次からはアニメ映画に戻りましょう。

183.怪盗ドラパン 謎の挑戦状 A

感想:この話は「神谷明がコミカルな子供の役をやってる」って点が本当に面白い。毛利小五郎とかじゃなくて本当に子供向けの役。
ドラえもんズシリーズの中だとすごく個性が立ってて見ててめちゃくちゃ楽しい話。新しいドラえもんを作ろうっていう気概がまだあふれていた頃だったと思う。

182.21エモン 宇宙いけ!裸足のプリンセス C

概要:ノーブル星から地球に表敬訪問をしたお姫様「ファナ」は自由にあこがれて逃げ出し、その先のつづれ屋で「21エモン」ら3人と出会い、追っ手をまくために彼らとある星へ向かう。向かった先でホテル代が支払えなくなった4人は、近隣の星で行われる「銀河ラリー」という宇宙船レースに出場し、それに乗じてホテル代を踏み倒して逃げる算段を立てた。


感想:TVアニメ準拠で、かつアニメとは比べ物にならないほどにぬるぬるした動きの作画、久川綾の若かりし頃の演技、「バッチグー!(当時の流行語?)」…見どころは結構ある。ただちょっと違和感があって、ゴンスケがかなり素直な性格だったり、ルナよりゲストヒロインにデレデレしてたり、つづれ屋の人々が割かし成功してたり、宇宙船がオリジナルだったり…『最初にこれを見ても楽しめるようになっている(実体験)』ってのが大きなアドだが、結構人を選ぶ出来なんじゃないだろうか。
ただ21エモンの魅力って俺はルナとリゲル、エモンと周囲の衝突だと思ってるので、その肝心の部分がまったく脱臭されている。まぁ…ぼくらのウォーゲームとかに近い映画化だと思う。

TVアニメ版21エモンについては、見直すにつれて「あれ、これもしや俺の性癖にだいぶ根差してる作品じゃないか?」ってなってしまった。宇宙図鑑にあこがれていた小学生のワクワクに、ヒロインの「しずかちゃんや魔美と差別化」を模索したかわいらしさ。これを見せてくれた自分の祖父母との思い出。ちょっと色々と涙腺に来る要素が多くて…。ひとつ言えるのは、2代目ED「ベートーベンだねRock'n Roll」の映像が神。滅多に「神作(これも死語になったねぇ)」なんて言葉を使わん俺だが、これは本当に俺の性癖の創造神だからねぇ。

181.21エモン 宇宙へいらっしゃい!  D

概要:「21エモン」初の映像化作品。原作にかなり忠実。

感想:見たんだけどなーんか記憶の中の21エモンと違う…と思って調べたら、昔見た記憶があったのは「宇宙いけ!裸足のプリンセス」だった。
こっちはこっちで、21エモンという新ブランドをアニメで切り開こうという気概が感じられる。この時期の藤子不二雄ブランドはまさに鉱脈だったわけだし。TVアニメ版は設定を相当変えていて、それでもSFの難しい部分(日本人ウケしない部分)ががっつり残っちゃったもんだから、エモンが宇宙に出てから最終回までぐだぐだなんてもんじゃなかったわけで…やっぱ難しかったのかなぁ。「魔界大冒険」みたいな話が好きな人なら絶対面白いのが21エモン
TVアニメ版については本当に語りたいことが多すぎる。9割ルナのことだけど。