1日1本のアニメ映画を要求する!

嫌いな小説は森絵都の「カラフル」

124.踊れ!アミーゴ D

概要:「そっくりなニセモノが出没し、本物の人間はいつのまにか姿を消してしまう」…そんな春日部の都市伝説があるという。妙にノリがよかったり優しかったり、突然人が変わったようになる周囲の人物たち。そして「もう一人の自分に見られているような気がする」という不気味な経験…これはいったい…?

感想:前半は「踊れ!アミーゴってなんなんだよ!」
下手なホラー映画よりも本格的だ。「ホラー映画」が苦手な人というのはわざわざそんなものを見に行かない。しかし子供向けのアニメなのでうっかり見てしまう。そこで超本格的なホラー演出をかまされる。だから前半だけだと本当に怖い。「クレしんにしては怖い」「子供向けアニメとは思えない」じゃなくて、冗談抜きでホラーなのだ。むしろクレしんというギャグアニメのキャラでやるから、下手にオリジナルや実写でやられるよりも落差が際立ってよほど怖い。ホラー面を相当に研究しているのが分かる。それとは別に、パロディとしてのホラーの王道演出も多かった。
だがこのホラー演出をすべてにおいて台無しにするのが後半のあまりにくだらない脱力ギャグである。メリハリがきいてるとか好みじゃないとかではなく、ただひたすらにくだらないのだ。前半の妙に気合が入っていたのは何だったのかと思うほどに後半がひどい。まるで才能の枯れたSS作家が義務感だけで書いているエロSSみたいなしょうもなさ、まさに「踊れ!アミーゴってなんなんだよ…」。
ナンチャッテ四川料理みたいなもんで、「前半は激辛で後半は虚無感、本来の四川料理特有の旨味や爽やかさを何も感じず、食べた後に痛みと疲労感だけが残る」ってやつ。まさに視聴後の感想は最悪の一語である。

これはいろんな意見があって、特に「前半は子供向けであることを忘れすぎである。軌道修正が必要だった」という反論が人気だ。ただ、じゃあ子供がこれ見て後半に喜ぶのだろうか?俺が子供だったら怖かった記憶だけが残って、あんまり喜ばないと思うのだ。軌道修正はもっと「雲黒斎」「ケツだけ爆弾」の終盤みたいにド派手にしてくれた方がよかったかも分からない。
まぁつまり…いろんな意味で「クレしんでやるべきじゃなかった」話だなぁって印象。色々制作側の政治的事情を感じるものだったし、映画スタッフの暴走みたいなものも感じた。いい意味で怪作だったヘンダーや、非常に丁寧な作品だったオトナ・アッパレ、アクションとして軸を絞ってあるジャングル・カスカベボーイズ、言わんとしてること自体は分かるプリンセス・ヒママターなどに対し、この作品はそもそも軸があるとしたら「前半のスタッフのやりたい放題ぶり」、つまり映画の本質を完全に見失っていると思う。もうなんか…賛否両論という便利ワードで片づけるのもめんどくさい、そういう話。
たとえば風間君のママのシーンは子供をいたずらに怖がらせるだけなので不要だったと思う(実際地上波でもカットされてるらしい)。なんかその辺に色々事情を感じる話。